自律神経失調症の検査 自律神経失調症は病気?
自律神経失調症は、自律神経失調症の症状を訴える患者の数が年々増加しているにも関わらず、まだ医学的には完全に解明できていない病状です。
昭和36年頃、東邦大学の阿部達夫氏が自律神経失調症という病気を定義しました。自律神経失調症は日本でしか使用されていない病名ですが、日本においてもこの病気の存在を認めていない医師もいます。
日本心身医学会では、自律神経失調症を、「種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの」と暫定的に定義しています。自律神経失調症という名前の病名は、DSM(アメリカの「精神疾患の診断・統計マニュアル」)やICD(世界保健機関(WHO)が制定した国際疾病分類)には、正式な病気として記載されていません。
ストレスなどの精神的な問題も関係していると考えられているため、曖昧な意味合いで使用されている病名であるとも捉えることができます。 だからと言って、自律神経失調症が存在しないというわけではありません。実際に、自律神経失調症の症状で苦しむ患者は日本だけでなく世界中に存在しています。ただし、海外においては、同じ自律神経失調症の症状が現われていたとしても、「自律神経失調症」という病名で診断されておらず、不定愁訴(※1)を伴った病状として診断されます。
このように、自律神経失調症が医学界ではっきりした病気であると認定されていないこともあり、自律神経失調症を患っている人が原因不明や病名不明と診断されることも多いのが現状です。 しかし、最近はやはり自律神経失調症は病気の1つとして捉えるという風潮が強く、実際に、うつ病や神経症でなくても自律神経失調症の病状が現われるなど、自律神経失調症の症状が明確である病例が多く存在しています。
※1 不定愁訴(ふていしゅうそ)とは、体のどこが悪いのかはっきりせず、検査をしても原因が解明できない病状のことを言います。例えば全身倦怠、疲労感、微熱、動悸、息切れ、頭重、頭痛、耳鳴りなどの症状です。

自律神経失調症を診断する方法は?
自律神経失調症は病気としてまだ完全に解明できていないため、自律神経失調症であるかどうかを検査する方法については、まだ曖昧な部分があります。自律神経失調症の検査方法として、まず他の病気を患っていないかどうかを検査することです。自律神経失調症の症状と類似した病状として、内臓などの病気、精神的な病気の可能性も考えられます。この検査の段階で、自律神経失調症の患者は、鬱病、パニック障害、身体表現性障害などの精神疾患として診断されることが多いのですが、実際にはこれらの精神疾患には当てはまらないケースもあり、その場合に自律神経失調症の可能性が高いと言えます。
また、病院での検査の結果、正式に病名がつかないことが患者のストレスとなることを懸念して、適応障害と診断する医者もいます。 自律神経失調症の検査方法としては、まず、ほかの病気がないかどうかを調べます。自律神経失調症の症状は、内臓などの病気、精神的な病気と症状が似ているため、そういった疾患である可能性もあります。
検査の結果異常なしと診断され、ほかの病気が見つからない場合は、体の中に器質的な病変は見られない、つまり、癌、心筋梗塞、脳出血、胃潰瘍のような物理的な病気ではないということになります。その場合は、自律神経失調症でないかどうかの検査を行う必要があります。自律神経失調症は、癌や心筋梗塞などの器質的な疾患ではなく機能的な疾患であるため、器官や機能に目に見える病変があるわけではなく、そのため、自律神経失調症の検査は難しいと言うことができます。
最近では、病気が見つからない病状や不調などを「自律神経失調症」として簡単に片付けてしまう医師がいます。癌の症状が自律神経失調症の症状と酷似している場合があるので、簡単に自律神経失調症として診断してしまうと、重大な病気を見逃す恐れがありますので、十分な注意が必要です。自分が自律神経失調症かどうかを判断するには、同時に自律神経失調症の特徴的な症状・疾患が複数現われているかどうかを確認しましょう。
自律神経失調症の症状の多くの場合は、自律神経が支配する身体の多くの器官・機能が同時に変調を来すため、たとえば「動悸、息切れがひどくて、ときどき耳鳴りもする」、「常に倦怠感があって、やる気が起きない、胃腸の調子も悪い」などといったように、複数の症状が一時に現われるのが特徴です。また、自律神経失調症を発症している場合は、シェロンテスト(※1)がみられることが多いので、判断基準の1つになるでしょう。
※1シェロンテストは、血圧計を用いて、安静時(正確には仰臥位)と、起立時の血圧を比較し、自律神経の安定度を診る検査のことです。
